捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
私の目に写ったのは、見たことのある男の人。
……さっき、ロビーでハンカチを拾ってくれた人だ。
まさか、あの人が本当に相手の人だったなんて……!
……いや、世間、狭すぎるって……!
その人はさっきと同じように黒い瞳で、私のことをじっと見ていた。
きっと、さっきのことを思い出しているんだろう。
「琴音?どうしたの、急に固まっちゃって」
「や、な、何でも……」
「そう?ならちゃんとご挨拶なさい」
「はい……。横山琴音(よこやまことね)です。よろしくお願いします」
戸惑う心をとりあえずそこに置いておいてぺこっと頭を下げて顔を上げると、うんうんと頷く坂本さんの隣で、やっぱり私の目をじっと見てくる男の人がいた。
……何か、目を見られると緊張するし、考えてることを見透かされているような感じがする……。
すごく真っ直ぐな人なのかもしれないと感じた。