捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「……琴音がそうしたいなら私は止めないけど……でも、それを言うのは、三浦くんにちゃんと気持ちを伝えてからにしなさいね」

「……言わないよ。言えるわけないでしょ?」

「諦める癖は捨てなさい。気持ちを伝えれば何か変わるかもしれないでしょう?何もせずに諦めるよりずっとマシよ」

「!」


諦める癖なんて、年を重ねるごとに身についていくもので。

恋愛なんて何年も前から諦めていたものだった。

“もうアラサーだし”、“会社に出逢いないから”、“男友達がいるわけでもないし、合コンだって無意味でしょ?”

……そんな言葉でいつも“私には恋愛なんて必要ないんだ”って扉を閉ざしてきた。

そんな私にドキドキをくれたのは惣介さんで。

嬉しかったし、すごく楽しかった。

……でも、怖い。

惣介さんの気持ちを聞くのも、告白して傷つくのも、ギクシャクするのも、虚しい想いをするのも。

だから、どう動けばいいのかわからない。

この歳になってしまうと、失敗するのが怖いの。

石橋なんて何度も何度も叩いて、叩きまくって、絶対に壊れないことを確かめないと渡ることなんてできない。

私の気持ちは……石橋にヒビが入ってる。

“崩れるかもしれないから、渡らない方がいいよ”、って。

だから……やっぱりこの気持ちは封印してしまって、結婚をやめてしまうのがいいって思うんだ。

それなら、誰も傷付かないし。

ちゃんと諦め方を知ってるんだから、その通りにすればいいだけでしょ?

簡単なことだよ。

そうやって今までも生きてきたんだもん。

 
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