捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「……やっぱり」
「もし琴音が何もせずに“結婚やめる”なんて言ったら、私が琴音の気持ちもそうなった経緯もぜーんぶ三浦くんに話すから。いいわね?」
「!!そんなのダメ!……そんなことしたって、何の意味もないじゃない!」
「意味?あるでしょ?何の理由もなく結婚を断られた日には、三浦くんにモヤモヤが残るんだから。ちゃんと理由を知る権利はあるわ。お互いに納得した上で結婚の話がなくなって、それでやっと次に進めるものでしょ?」
「……そんなのきれいごとだよ。やっぱり意味ないと思う。わざわざ惣介さんに私の気持ちを知られなくてもいい」
ネガティブな方に進んでいってしまった気持ちは、もう戻せない。
わざわざ苦しい方に進まなくてもいいじゃない?
わざわざ恥ずかしい思いをしなくてもいいじゃない?
……一番楽な方に進んで、何が悪いの?
「……もう。強情なんだから。誰に似たのかしらね」
「!」
「ほんと、お姉ちゃんにそっくり」
「う……」
「琴音が三浦くんへの気持ちを忘れる、って決めたなら仕方のないことだけど、これだけはお願いしたいの」
「え?」
「旦那の顔もあるから、“結婚をやめる”って話はまだしないで欲しいの。……大人の事情。わかるわよね?」
「……うん」
「もう少し、三浦くんと向き合ってくれない?今まで通り」
ね?、と叔母が私に諭すような柔らかい笑みを向けてくれる。
きっと叔母は私と惣介さんがうまくいくように応援していてくれたんだと思う。
だからこそ、こうやって私に真っ直ぐぶつかってくれて、後もう少しだけでも向き合えって言ってくれてるんだ。
その温かさに私は頷くしかない。
「…………わかった」
ぽんぽん、と私の頭を撫でてくれる叔母の手は母親のそれを思い出させる。
やっぱり姉妹って似てるものなんだな、と私に安心感を与えるには十分だった。