捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「えっと、あの……」
「え?」
「じ、実は……ホームベーカリー頼りなのでほとんど何もしてないんですけど……パン、焼いてきたんです。お昼にでも、公園で惣介さんと一緒に食べようと思って」
私はこっそりと持っていたエコバックを惣介さんの目の前に差し出す。
慣れないことにちょっと照れ臭いと思いつつ惣介さんのことを見上げると、そこには表情を輝かせた惣介さんがいた。
「それって……もしかしなくても……てっ、手作りってことですか!?」
「っあ、いや……えっと……、粉とか卵とか何やかんや入れただけなので、手作りとは胸張っては言えませんけど……い、一応?」
「!!十分です!嬉しいです!!」
今にもピョンピョンとジャンプをして喜び出しそうな惣介さんに、私は慌てて声をかける。
「!!ま、待ってください!そんなに喜ばれると、困ります!期待しちゃダメです!」
「えーでも……嬉しいですし!」
「ダメなものはダメですっ」
「えー……」
「惣介さんっ」
「……はーい……」
またもや納得のいかない様子で、渋々惣介さんが頷いた。
はぁ、と諦めるように息を吐いた後、拗ねたようにぷいっと私から顔を反らし二歩歩いたところで、惣介さんがくるりと私の方を向いて、手を差し出してきた。
「……でも、やっぱり早く食べたいです。だから、早く公園に行きましょう!早く!」
「!……はいっ」
そのちょっと拗ねてる表情は嫌いじゃなくて……むしろ、かわいくて好きで、くすっと笑ってしまう。
何かこう、きゅんとして、嬉しくなる。
もっと惣介さんのいろんな表情が見たいなって会うたびに思う。
早く早くと急かすように上下に動く惣介さんの手に自分の手を伸ばしきゅっと握ると、惣介さんは小さく楽しげに腕を前後に動かしながら、私を引くように歩き出した。