捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。

　

「琴音さん」

「え？」

「行きましょう？」


そう言って差し出される惣介さんの左手。

“手を繋ごう”という意味だと気付いた私は、そっと右手をその手の上に乗せる。

惣介さんは満足したように笑って、私の手をきゅっと握ってくれた。

それと共に、私の胸もきゅっと甘く締め付けられる感覚がした。

手を繋ぐのって好き。

今までそんなに他人と手を繋いだことはなかったし思ったことはなかったけど、惣介さんのぬくもりを知ってからはその虜だ。

惣介さんの手ってすごく男っぽい骨ばった手で、爪は綺麗に切り揃えられていて。

私はハンドクリームが欠かせないけど、惣介さんの手は荒れとかも全くなくて、すごく羨ましい。

とても包みきれないけど、私も頑張ってよいしょよいしょと指を伸ばして惣介さんの手をきゅっと握ってみる。


「……くくっ、琴音さん、くすぐったいです」

「え？あ、すみませんっ」

「いえ？琴音さんを感じることができて嬉しいです」

「！」


“私を喜ばす名人”の惣介さんはにこっと笑って、こっち、と私の手を引いてくれる。

前とは違って見える風景と惣介さんの近さに、私の顔も緩んだ。