捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
*
「ちょっと歩きましょう」と惣介さんとのんびり手を繋いでお散歩。
風は冷たいけど、太陽の光はぽかぽかと温かい。
「何かいいですね~この河川敷」
「でしょう?琴音さんが好きそうだなって思ってました」
河川敷には子供が走り回る姿や老夫婦が座る姿があって、その光景だけでもほんわかと温かくなる。
何よりも惣介さんの手が温かくて、それが一番の幸せだ。
「そうだ。琴音さんって嫌いな食べ物ありますか?」
「え?嫌いな食べ物、ですか?」
「はい」
「ん~……特に思いつかないですね~好き嫌いあまりない方なんですよー。あ、でも濃い味より薄味の方が好きです。こってりしたものってあまり好んで食べなくて。こだわりがあるわけではないんですけど、何となく」
「あ、わかります。俺も薄味の方が何か好きです」
「ほんとですか?それは良かったです!前、それでケンカしたことがあって。味の濃い薄いって結構大きいんですよね~」
ケンカしたのは元彼で。
今となっては笑い話だし、過去の話だけど。
「……え、ケンカですか?」
「あ、でも痴話ケンカ程度だったし、結局は私が折れて丸く収まりましたけどね」
「……琴音さんってケンカするんですね。意外です」
「そうですか?イラッときちゃうことはやっぱりありますよ?……惣介さんともするかもしれないですよ?」
「……俺と琴音さんがケンカ……想像つきません」
「……確かに……ふふっ」
繋いでいる惣介さんの手にきゅっと力が入ったのを感じる。