捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 



「ちょっと歩きましょう」と惣介さんとのんびり手を繋いでお散歩。

風は冷たいけど、太陽の光はぽかぽかと温かい。


「何かいいですね~この河川敷」

「でしょう?琴音さんが好きそうだなって思ってました」


河川敷には子供が走り回る姿や老夫婦が座る姿があって、その光景だけでもほんわかと温かくなる。

何よりも惣介さんの手が温かくて、それが一番の幸せだ。


「そうだ。琴音さんって嫌いな食べ物ありますか?」

「え?嫌いな食べ物、ですか?」

「はい」

「ん~……特に思いつかないですね~好き嫌いあまりない方なんですよー。あ、でも濃い味より薄味の方が好きです。こってりしたものってあまり好んで食べなくて。こだわりがあるわけではないんですけど、何となく」

「あ、わかります。俺も薄味の方が何か好きです」

「ほんとですか?それは良かったです!前、それでケンカしたことがあって。味の濃い薄いって結構大きいんですよね~」


ケンカしたのは元彼で。

今となっては笑い話だし、過去の話だけど。


「……え、ケンカですか?」

「あ、でも痴話ケンカ程度だったし、結局は私が折れて丸く収まりましたけどね」

「……琴音さんってケンカするんですね。意外です」

「そうですか?イラッときちゃうことはやっぱりありますよ?……惣介さんともするかもしれないですよ?」

「……俺と琴音さんがケンカ……想像つきません」

「……確かに……ふふっ」


繋いでいる惣介さんの手にきゅっと力が入ったのを感じる。

 
< 150 / 254 >

この作品をシェア

pagetop