捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「……もし万が一ケンカしてしまったとしても、すぐに仲直りしましょうね」
「!……はい、もちろんです」
「あ、でもケンカになるかもしれないと、自分の気持ちを飲み込んで我慢するのも禁止ですよ?」
「……うーん。なかなか難しいですね……」
「大丈夫ですよ。俺たちなら。何となく、ですけど」
はい、と頷こうとした時、ふと土手の下の方に目を向けた私の目に飛び込んできたのは衝撃的な光景だった。
つい、足を止めてしまう。
「!!!」
「……え、琴音さん?どうしたんですか?」
……ひえ~ディープ!!!
真っ昼間だし、もちろん辺りには人もたくさんいるのに……!
惣介さんの呼び掛けが全く耳に入っていない私の目に写るのは、土手に座っている男の外人さんと日本人の女の子のカップルがキスをしている光景。
何度も、離れてはくっついて。離れてはくっついて。
普段は見ることのない光景に、つい、まじまじと見てしまう。
エッチっていうより、何かすごく綺麗だ。
……外人さんと美人さんだからだろうか?
「っ!!こっ、琴音さんっ!?」
「えっ?あっ!!」
惣介さんの呼び掛けに顔を上げると、惣介さんとばちっと目が合った。
つい唇に目がいってしまって、かあっと顔が熱くなるのを感じて口元を手で押さえてしまう。
惣介さんもキスシーンを見たらしく、私と同じように頬をピンクに染めていて。
惣介さんは私の手をぐいっと引いて、歩き出す。
「いっ、行きましょう!」
「あ、は、はいっ」
……それからしばらくは、私と惣介さんとの間に沈黙という魔物が居座っていた。