捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「お疲れさまです」

「!……お、お疲れさまです……?」

「ごゆっくり、と言われたので、お言葉に甘えてゆっくり琴音さんを待ってました」

「は、はぁ」


私は状況がわからず首を傾げ、すっかり勘違いをしてしまっている布施くんはニヤニヤと笑い、目の前の男性は周りの女の人たちの視線を気にした様子もなく私に笑いかける。

……一体、どんな状況なんだろうか?

ふと男性が布施くんに目を向け、笑顔を浮かべたまま見定めるような目をして口を開く。


「……そちらは?」

「え」

「あっ、俺ですか?横山さんとはただの同期で、俺は愛する妻子持ちなので、ご心配なさらず!じゃあ、俺帰るな!お疲れ!」

「えっ?えっ?」


待って、取り残されても困るんだけど!と思いながら、私は去っていく布施くんの後ろ姿を見送る。

そして、目線を目の前の人に戻すと、その人は安心したような顔でポツリと言った。


「……良かった」

「へっ?」

「浮気されてなくて」

「……?」


浮気って何のこと?

そもそも、あなたは誰?

 
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