捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「でもそれも年と共に面倒になって。人と関わらずに一人でいた方が何も考えなくていいし、気を使うこともないし、楽で……。あー俺はこのまま誰にも心から必要とされないまま、一生一人で生きていくんだな、と思ってました。そんな時に、部長にお見合いをしてみないかという話をされたんです。……もともとお見合いすることになっていた男が、他に結婚したい人がいるからと断ったらしくて、結婚していない人間を探していたところ、ちょうど俺を思い出したみたいで。お見合いは形だけで、気に入らなければ断ってもいいから代わりに出てもらえないかと」

「えっ!?そ、そうなんですか?」

「はい。俺はピンチヒッターだったんです」

「!」


驚いた。

まさか本当のお見合い相手が惣介さんじゃなかったなんて。

惣介さんじゃなかった場合を考えてしまうと……すごく怖い。


「……でも、いい年なのは間違いないし、恋愛をする気力も全くなかったし、身を固めてもいいかなと。ちょうどいいタイミングかもしれないって思ったんですよね。だから、素の俺を出して、相手がうんと言ってくれるなら結婚しようと思いました」

「……素の、惣介さん」

「はい。あなたにずっと見せていた姿ですよ」

「!」

「正直、琴音さんに逢うまでは予想すらしてませんでした。……捨てたはずの……諦めたはずの恋愛を自分がすることになるなんて」

「っ!」

「素の俺にも素直で真っ直ぐに接してくれる琴音さんに一気に惹かれていって……こんな俺なのに琴音さんは好きになってくれて。好きな人と心が通じ合えたのは初めてだったから、幸せでたまらなくて。俺は琴音さんに救われたんです」


そんな風に思っていてくれていたなんて、嬉しくて涙が出そうになる。

でも……救われたのは私も同じ。

 
< 186 / 254 >

この作品をシェア

pagetop