捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「……琴音さん?」
「っ!」
ずっと逢いたかった人の声に、私の身体はビクッと跳ねる。
でも、振り向けずに、背中にその気配を感じる。
動けない私に向かって、声が近付いてくる。
私の横から影が落ちてきた。
「やっぱり琴音さん。一人……みたいですけど、こんなところでどうしたんですか?何かありましたか?」
「……」
「いつからここにいたんですか?寒いのに……風邪引きますよ?」
「……」
「……琴音さ」
「……何で?」
「え?」
「何で、そんなに普通なんですか!?」
「!」
振り向くとそこには私がよく知っている惣介さんの姿。
癖っ毛の頭に黒縁メガネの。
私に会わなくてもその格好なの……?
その表情は驚いていて、でも優しくて……私のすごく好きな顔で……
いろんな気持ちが襲ってきて、好きという気持ちが一番に溢れだしてきて……泣きそうだ。
もどかしい気持ちをぶつけるように、私はぶつかるようにして、惣介さんの胸に拳を当てた。