捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「ナニをする気ですか。ダメですよ。」


私と惣介さん以外の声が入り込んできた。

その人は。


「!あ、田仲さん……っ?」


部屋に現れたのは私たちの結婚式のお世話をしてくれている田仲さんだ。

最初に会った時から、惣介さんのボケに、ニコニコと笑いながら的確に突っ込んでくる、見事なまでのツッコミ担当の人だ。

いつの間に部屋に入ってきたんだろうか?


「お二人がバカップルなのは十分わかってます。でも今日は特別な日なんですから、ビシッと決めてください。特に新郎様、あなたですよ」

「う……はい……。ですよね……頑張ります。琴音さんのためにも」

「ぜひそうしましょう。では。そろそろ移動しますから。お二人とも準備をお願いします」

「あ、はい」

「っ!は、はいっ」


惣介さんとの会話のお陰でどこかに行っていた緊張が一気に私のもとに戻ってきた。

心臓がばくばくと鳴り始め、音が遠くなって、今にも身体が震え出しそうな感覚。

指先が冷たくなる。

……ど、どうしよう。

いざとなったら、緊張で身体が動かない……!

 
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