捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
そう後悔した瞬間、突然惣介さんの大きな手が視界に入ってきて、そのまま私の頬にツツと触れた。
「っ、そ、惣介さん……?」
どうしたんだろう?と、目線を上げて惣介さんを見る。
その表情にはいつもの笑顔はなくて、すごく真面目なものだ。
……少し怒っているような、私の心を見透かそうとしているような、そんな表情。
「……何でもないことはないでしょう?また秘密ごとですか?」
「や、そういうわけじゃ……惣介さ、ん……っ」
視界が一気に暗くなるのと同時に、そっと塞がれる唇。
その柔らかさと温かさに私は目をぎゅっと閉じて“その先”を覚悟したけど、何度かちゅ、ちゅと軽く触れた後、呆気なく惣介さんは離れてしまった。
私はゆっくりと目を開けて、惣介さんを見上げる。
私の目に写るのは、さっきよりも少しだけ表情が柔らかくなって私を見つめる惣介さんの顔。
……あれ?もう、終わり……?
何となく物足りないと思ってしまった私は何を期待しているんだろう?
もっと欲しいと思ってしまうなんて……がっつきすぎもいいところだ。
こんな気持ちがバレたら、恥ずかしすぎる……。
一人落ち込んでしまった私の頭の上に惣介さんがぽんと手を置き、寄り掛かるようにしてコツンと頭をぶつけてくる。