捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「……で?何を考えていたんですか?そろそろ教えてくれませんか?」


私の顔を観察するようにじっと覗き込んでそう言った惣介さんに、はっと気付く。

……わかった、きっと顔に出ていたんだ。

眉間にシワを寄せていたとか……まさか、寄り目になっていたとか!?

そう思った私は、惣介さんから自分の顔が見えなくなるように、惣介さんの腕に自分の腕を絡めてピタッとくっつく。


「えっ?こ、琴音さんっ?」


不意の私の行動に惣介さんが少し慌てたように私の名前を呼ぶ。

でも私はその呼び掛けを無視して、私をいつも包み込んでくれるその胸に寄り添った。

惣介さんの鼓動と熱にほっとする。

……これで表情は読まれないはずだ。

それに……今の声の感じとこの鼓動の速さだと、惣介さんをきっと振り回せる。

ここぞとばかりに、私はすりすりと惣介さんに擦り寄ると、惣介さんの鼓動は速くなり、それと連動するかのように私の鼓動も速くなっていく。

……リズムを奏でるように、シンクロしていく。


「……惣介さんが心配するようなことは考えてません。ちゃんと、私の気持ちはここにいますから」

「……そ、それは良かったです……けど……、ズルいのはどっちですか……」


はぁ、と少し照れたような惣介さんの溜め息が落ちてきて、私は“思った以上に振り回せたみたいだ”と嬉しくなってにんまりと笑ってしまう。

 
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