捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
琴音さんがシートベルトを締めるのを待ちながら、俺は口を開く。
「それより、今日は買い物に付き合わせてしまうことになって、すみません。本当は買っておけば良かったんでしょうけど……」
「いえいえ!全然です!荷物持ちくらいはさせてください!それに私の方こそ、また料理お任せしちゃうなんて……、お言葉に甘えちゃって本当にすみません」
琴音さんはすごく申し訳なさそうな表情を浮かべて頭をペコッと下げる。
その表情の理由は……彼女は料理があまり得意ではないらしいことにあるんだろう。
初めて琴音さんを俺の部屋に呼んだ時にこのことを打ち明けられたんだけど、俺は別に料理ができるできないは気にしないし、むしろ料理が好きだから任せてほしいと伝えたのに……やっぱり気になっているらしい。
そういう小さなところを気にしてしまう琴音さんのことは……正直、すごくかわいいと思う。
まぁ、もちろん、いつかは彼女の手料理を食べられる日が来ればいいとは思うけど、その日は近からず遠からず、必ず来る未来だと俺は信じているし慌てることでもないはずだ。
……とは言っても、その未来を迎えるには条件がある。
“あることを無事に琴音さんに受け入れてもらえた場合”という、俺にとってはハードルのかなり高い条件が。