捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
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俺は足枷をはめている。
その足枷とは、琴音さんにキス以上のことをするのは、琴音さんにまだ伝えていない“あること”を告げて受け入れてもらってからと決めていること。
その“あること”とは……、俺の容姿のことだ。
琴音さんの前では黒縁メガネを外したこともなければ、癖のある髪の毛を上げたこともない。
つまりはいつも顔を隠している状態だ。
まぁ隠していると言っても、実際はこの姿が楽だし、素の俺ではあるんだけど。
自分ではよくわからないけど、俺は所謂、“イケメン”という部類らしく、メガネを掛けず髪の毛を整えておいた場合、昔から必ず他人に言われることは「カッコいい」とか「顔が整ってる」とか「モデルみたい」とかだった。
外を歩けば視線は付きまとうし、面倒だなと思いつつも、持って生まれてしまったものは受け入れるしかなく、今まで生活してきた。
ただ、そこには問題があった。
俺は派手な容姿に反して、内面は地味。
そのせいで、心無い言葉を受けたことが何度もある。
でも、それはこういう性格をしている俺が悪いんだしと笑って誤魔化してきた。
でも。
好きになった女には“中身はつまらないけど、飾りとしては最高”、“あなたは黙って私の隣にいればいい”などと言われ、信頼していた友達には“顔がいいだけでいい女捕まえられるなんて得だよな”、“お前といれば、いい女が釣れる”などと言われ。
壁を作らずに親しく接してくる人間ほど、そんな気持ちを持っている人間ばかりで。
……今となれば、気付かなかった俺もバカだったのかもしれないけど……
でも、それでもやっぱり最初のうちは信じていたかったんだ。
そんなことが何度も続くうちに、いつの間にか俺は人を信じられなくなっていた。
俺に近付いてくる人間は俺の表面しか見てくれていないんだ、と。
誰も俺の内面を見て接してくれない、と。