捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「琴音さん」
「あ、はいっ」
「のんびりってことで、少し歩きましょうか」
「はい」
私は緩やかな坂をゆっくりと登り始めた惣介さんの後を追い、隣に並んだ。
ピチチチという鳥のさえずりが緑の中に響く。
「動きやすい格好で、ってこういうことだったんですね」
「足元を気にしながらだと、景色をゆっくり楽しめませんからね。それに」
「それに?」
「何となくですけど……琴音さんってどちらかと言うと、今日みたいな服装の方が好きなんじゃないかなって思ったんです」
「!」
「やっぱり図星ですか?当たりですね」
惣介さんが歩きながら私の顔をひょいと覗き込んでくる。
得意そうな顔をして。
惣介さんって私の好みがわかる特殊能力を身に付けているのかもしれない。
……当てられるたびに嬉しい気持ちが膨らんでいく。
「……惣介さん的にはどっちがいいですか?」
「どっち……そうですねぇ……」
うーん、と惣介さんは木を見上げながら考えてくれているようだ。
ここで惣介さんの好みをびしっと当てられたらいいのかもしれない。
でも……残念ながら、私にはその特殊能力は備わっていないようだ。