捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
急激に明るくなった視界に、私は眩しくて目を細めてしまう。
全身に降り注ぐ太陽の光が温かい。
「こっちです!琴音さん!」
「えっ?」
いつの間に移動したのか、惣介さんは2メートル先にいて。
私に向かって手招く。
惣介さんの向こう側を見ると、そこには。
「海……!」
私は惣介さんが立っていた手すりに近付き、その光景を眺める。
太陽の光でキラキラと光る水面が眩しい。
私たちが辿り着いた場所は高台の展望台で、まるでオモチャみたいな街並みと、その向こうには真っ青な海と水色の空が広がる。
「……綺麗」
「でしょう?街並みが小さいおもちゃみたいなのもなかなか可愛くていいんですよね。こう手に取れちゃいそうな感覚がします」
惣介さんが手を伸ばして掴むような動作をするのがかわいくて、私も真似して手を伸ばす。
「じゃあ、私はあの赤いタワーを掴んじゃいます」
「あっ、取られちゃいましたか……じゃあ、俺はあの真っ白な灯台にします」
「灯台もいいですね~。てっぺんに光が反射して綺麗」
「こんなに簡単に掴めちゃうと、自分が巨人になった気がしてきますよね」
「ふふっ、確かに!あ、でも、私にとっては惣介さんはいつも巨人ですよ?」
「え、そうですか?」
街並みに顔を向けていた惣介さんが、私にその目線を移す。
ほら、見下ろされてる。
そして、私は見上げる。
キョトンとしている惣介さんの表情がかわいいと思いながら、手を上に伸ばして惣介さんの頭の高さまで上げた。