捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「惣介さんって結構身長高いでしょう?私、160ないから羨ましいな~って思ってたんです。高い世界から見る風景って何かいろんな景色が見えて楽しそうで」
「あ、なるほど。でも、20センチくらいならそんなに変わらないんじゃないですか?」
「っ!」
突然近付いた顔の距離。
惣介さんが身体を屈めて私の顔の高さに合わせてきたのだ。
ち、近いんですけど……!
その近さに私は動くことができない。
でも、惣介さんは気にする様子はなく、私の高さから木々を見上げる。
「あ、でもやっぱり違うものですかねぇ。周りの木が高く見えます」
「で、でしょ!?」
「それに……、いつもより琴音さんが近く感じます」
「!」
「なかなかいいものですね」
惣介さんはいつもより近い場所から、私に笑顔を向けてくる。
ドキドキするのと一緒に、ほわっとした気持ちが私を包み込む。
あ。いつもより惣介さんの顔が明るく見える。
いつもは惣介さんは俯く形になってるせいで、その顔に影を落としてしまうから。
……やっぱり何となくだけど、惣介さんって整った顔をしてそうな気がする。
そんな思いで惣介さんのことをじっと見ていると、惣介さんがひょいっと元の高さに戻った。