捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
「あっ!タイミングもバッチリだったみたいです」
「え?」
「ほら、琴音さんも見てみてください」
「あ、はい……」
こっち、と手招かれるまま、私も手すりに掴まって惣介さんがしていたように奥を覗き込む。
そこには……何も見えない。
「……えっと、何もありませんけど」
「え?見えませんか?」
「……ですね。真っ暗です」
「あれ、おかしいですね……」
頑張って身体を伸ばして見てみるけど、やっぱり何も見えない。
「……やっぱり見えません……。何かあるんですか?」
「あ、そうか。これ、素直な心の人にしか見えない、って言われてるんですよね」
「!す、素直、ですか……?と言うことは、私は素直じゃない、ってことなんですね……」
胸張って“私は素直です!”なんて言えないにしても、何となく落ち込んでしまう。
それに……今は惣介さんの前だし素直になってると思うんだけどな……。
「いや~……俺は琴音さんは素直な人だと思うんですけど……不思議ですね。じゃあ、もう一度見てみてください。素直な気持ちで」
「……は、はい」
「じゃあ、こっちに来てください?」
ぽんぽんと手すりを叩いて指定された場所に立って、さっきと同じように奥を覗き込む。
すると。