捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 



「すごく楽しかったです!」

「俺もです」

「また行きましょうねっ」

「……もちろん」


鍾乳洞の中でたくさんはしゃいでいる間にすっかり低くなってしまった太陽の下に戻って、再び緑に囲まれた私と惣介さんは、小さな小川の横を歩く。

小川を流れる水は山の中ともあって、透明ですごく綺麗だ。

寒くなったからか小川の中には生き物はいないけど、水の音はすごく癒される。

私はひょこっとしゃがみこんで、小川の水に指をつけてピチャピチャと水面を揺らす。


「……冷たい」

「もう、秋ですからね」


惣介さんが私の横にしゃがみこむのが視界の端に見え、私はぽつりと思っていたことを口に出す。

惣介さんの隣にいると、自然と言葉が口を出てしまう気がする。


「この時期って何となく寂しい気持ちになるんですよね」

「琴音さん?」

「あっ、別に何がある、とかじゃなくて、何となくなんですけどね」

「……何となく、ですか。でも、わかる気はします。寒くなるからですかね……」

「あ、そうかもしれませんね……人恋しくなるのかな」


でも何でだろう?

今年は少しだけ違う気がする。

……惣介さんがこうやって隣にいてくれるからかもしれない。

触れてるわけじゃないのに、温かいんだ。

本当に不思議な空気を持つ人だ。

 
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