航平さんと雨芽ちゃん
「雨芽、行くぞ。」
「うん。」
手を差し出して呼び掛けると、直ぐに雨芽の綺麗で小さな手が重なり、再び歩き出した。
部屋に入るとまた窓から見える夜景を眺めに行った雨芽に近づき、ルームサービスのメニューの一覧表を差し出すと、嬉しそうに選んでいた。
ケーキも約束したのに用意できなかったから一緒に頼んだ。
「ご馳走さまでした。」
「ごめんな。
ケーキも買って来れなくて。」
「ううん。
言ったでしょ?
航平と居られれば良いって。」
料理やケーキを食べ終え謝ると、雨芽は迷いなくそう言ってくれた。
「雨芽、もっと我が儘になれ。」
「えっ、何急に。」
「遠慮し過ぎてる気がするんだよ。
気に入らなければ怒っても良いし、悔しかったり悲しかったら泣けば良い。」
俺の突然の言葉に雨芽は驚いてるようだった。
でも、最近雨芽が泣いてるのを見た事ないって気付いた。
我が儘だって言われた事ない。