ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
ただ、与えられた仕事をミスなくこなし、決められた拘束時間の間、頑張ればいい。
そして、会社が終わったら、自分の時間を楽しむ。
生来の内気な性格ゆえに友人は極端に少なく、それでも、信頼出来る友2人には恵まれたけれど(親友と呼べるかは分からない)、今では、年賀状やごくたまにメールを交わすくらいだ。
このくらいの距離感が、私にはいい。
結婚、出産と人並の幸せを手に入れた彼女達と、そうそう逢って話すこともない。
それに、私の週末のアパートには、達也が訪ねてくる。
会社も仕事も関係なく、1人の男として。
5年も前から続いている私達の関係。
会社の人たちは、私達が恋人同士だったと知ったら、さぞかし驚くことだろう。
それほど完璧に私と達也は、社内において他人を演じているのだから。
雑然とした私の職場で、円熟味を帯びた大人の男、唐沢達也は目立つ存在だった。
唯一の若者といえば、尾木という痩せぎすの28歳の男だけ。