ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下

背は高くもなく、低くもない。でも、体型はスマート。

作業服の下は白ではなく、ブルーやピンクのごく薄く色の付いたYシャツを着ていた(色黒なので、ピンクを着ても嫌味にならなかった)


固い黒髪には少しウェーブがついていて童顔で。大きな二重まぶたの目尻には、優しい皺がある。


人の出入りが激しい薬品倉庫で、採用されて日の浅いパート主婦達は、目ざとく彼に目を付け、無邪気に唐沢達也の事を知ろうとする。


ーー営業物流課の唐沢さん、素敵よねえ…

ーー唐沢さん、おいくつなのかしら?

ーーどこに住んでるの?

ーー唐沢さんて、お子さんいらっしゃるの?


昼休みの休憩室で、女達は、そんなことを姦しく言い合う。


そして、江頭和子が物知り顔で言うのだ。


ーー唐沢課長は、独身だよ。
子供もいないよ。

奥さんはねえ…死んじゃったんだよ。
結婚してすぐにね。だいぶ昔の話だよ。


その言葉に、新人パート達は、悲鳴にも似た驚きの声を一斉に上げる。

こんなに雑然とした日常的な場所で、現実に起きた「死」をいきなり突き付けられては、平静でいられるわけがない。



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