ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


ーー奥さんは、綺麗な人だったんだよ。私、唐沢君に写真、見せてもらったことがあるから。なんで死んだのかは、詳しくは知らないけどさ。

まあ、子供がいなかったのが、不幸中の幸いって言ったらおかしいけど、まあ、そうだよね…



江頭は、すっかり食べ終えたアルマイトの弁当箱を前に胸を反らす。


彼女が達也を唐沢君と呼ぶのは、彼と特別な関係であることを周囲に強調したいからだ。といっても、隠微な関係ではない。


達也より二つ年下の江頭は23年前、この会社に入社したのだ。
達也とは元同期となる。



ーー同期の男の子、5人いたけど、唐沢君が1番、カッコ良かったね!
颯爽としてて、俳優でもおかしくないって。
でも、その時、すでに唐沢君、奥さんと付き合ってたの。大学の一年後輩だって…
女子はがっかりしてたなあ。

あ、私は好みのタイプじゃないから、関係ないけどねえ。



その後、結婚退職した江頭は、子供二人の大学費用を稼ぐ為に、この会社にパートとして戻ってきたのだ。






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