ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
背が高く、細面の輪郭に濃い眉と凛々しい目。
流行りな感じの無造作な髪。
私の通う高校にも、そんなタイプの男の子は、何人かいた。
彼らは私のことなど目もくれない。
目が大きくて、サラサラの髪と細くて長い脚を持つお洒落な女の子を彼女に選ぶ。
可愛い女の子しか眼中に入らないのだ。
それなのに。
貴彦は違った。
アルバイト先で、高校生は私と貴彦だけで、あとはフリーターか、大学生。
そんな中で貴彦は私に連帯感を持ったのか、気安く話し掛けてくれた。
注文が入らず、暇な時は私のそばに来て、あれこれとたわいない事を言い出す。
『俺、こないだ、熱39.5度も出ちゃって、3日も学校休んだんだ』とか。
『先週の土曜日、友達とバイキング行って、死ぬほど食べて気持ち悪くなったよ』とか。
ちょっと突拍子もなくて、思わずクスリと笑ってしまうような事。
そして、私の腕や肩にさりげなく触れてくる。
一瞬、どきりとしてしまうが、嫌な感じじゃない。
それは貴彦の癖だ。
皆にそうしてる。
分かっているのに、私はいつしか貴彦に恋愛感情を持つようになった。