ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


えっ…と驚く私。

言葉より、寂しい気持ちが先になり、何も言えずに、黙り込んでしまった。


「水村さん、良かったら、バイト終わったら、一緒に帰らない?

俺、そっちに合わせて上がるよ。
せっかく、知り合ったのに水村さんのこと、なんも知らねえし」



貴彦がそこまで言った時、電話が鳴り出した。


貴彦は、さっと素早く身を翻し、
壁に取り付けられた電話の受話器を取る。


「はい!濱の夢です。
毎度ありがとうございます!
ご注文でしょうか?」


叫ぶように言ったあと、すかさずメモを取る彼の姿を見ながら、嬉しさのあまり、私の身体は震えていた。




午後9時半。

店の前で、貴彦と合流した。

男の子と待ち合わるなんて、初めてだった。


「わっりぃ!
ジャンバーとか店長に返してたら、遅くなっちまった」


制服のシャツに紺のネクタイを締めた貴彦はそう言った後、いきなり、私の家とは逆方向に歩き出した。


「あっ…えっと、吉田君…!」


私は慌てた。


「え?水村さんち、そっちなの?」


貴彦が、目を丸くした。



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