ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
冬のある朝、母が脳梗塞を起こし、倒れてしまったのがきっかけだった。
幸い、命を落とすことはなかったけれど、軽い後遺症が残った。
気丈に振る舞うものの、少し舌がもつれるようになり、自力での歩行に杖が必要となってしまった。
健康だった母に、突然訪れた病魔。
1番ショックを受けたのは、本人よりも夫である父だったかもしれない。
ーーよしみ、
お母さんが倒れた……
今、救急病院にいる……
ちょうど、週末の休暇を利用して友人と近場の温泉に出掛けていた私は、父からの電話で急遽、病院に駆け付けた。
病院の待合室で合流した父は、私と妹の前で、人目も憚らず滂沱の涙を流した。
妹も涙を流し
「お父さん、大丈夫だよ。手術、うまくいくよ」
そう言いながら父の手を取り、撫でさすった。
(この頃にはもう妹も、父が時々、母に対して暴言・暴力を振るうことを知っていたのに)