ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
私立の進学校に通う彼の、空色の制服。
高校生が着るにしては、少し変わった色だ。
どこにいても目立つそれは、有名デザイナーが手掛けたものだときいたことがある。
そんな制服を着た男の子と2人で夜道を歩いている。
緊張して、顔が強張ってしまう私。
「あっ!水村さん、好きなんだ!
俺、全巻持っているよ」
ふいに、立ち止まり、貴彦は自慢気に言い出した。
「それ。アレックス。
ベタだけど、俺、1番好きだな」
私の通学バッグに付いているキーホルダーのマスコットを指差して。
少年誌で連載中の、勇気ある若者が仲間と助け合いながら、冒険をするというストーリーの漫画に出てくるキャラクター。
果敢に困難に立ち向かう主人公アレックスの「名言」と、親しみやすい絵柄で幅広い年層の指示を得ていた。
私もコミックを集めていたが、何分にも巻数が多くて、集め切れない。
半分くらいは、友達から借りて読んだ。
最新巻は、一週間前に出たばかりだった。
「本屋さんでは、品切れなんだって。
私、あちこち見たけど、どこにも売ってない。
当分、読めないなあ〜友達もだーれもゲットしてないし」
得意分野で、私の口は滑らかに動く。
やっとまともに貴彦の顔が見れた。