ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
貴彦は、歯並びの良い歯を見せた。
「俺、最新巻、持ってるよ。
明日、学校の帰りに店に持ってきてやるよ」
私が思わず、嘘!と喜んで飛び上がった時。
「タカ!」
甲高い声がした。
長いストレートヘアに白いカチューシャをした女が暗がりから突如現れ、私達の前に立ち塞がった。
貴彦と同じ色の制服。
「こんなところで、何してるの⁈」
肩に白いスポーツバッグを掛け、思い詰めたような表情で詰め寄る。
ミニスカートから伸びる膝小僧の目立たないスラリとした脚。
明かりの乏しい暗闇でも、彼女が人並み以上の美貌を持っていると分かった。
人影のない路地で、彼女の声は苛立ちを含み、私を威嚇するに充分だった。
「ルミ。
帰ったら、電話するつもりだったんだ。落ち着いてくれよ…あれは、誤解だから」.
貴彦は弾かれたように私から離れ、私には意味の分からないことを言った。