ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
ルミと呼ばれた女は、感情的に叫んだ。
「なら、どうして私のこと、彼女だって、朝倉先輩の前で言ってくれないの!
朝倉先輩のこと、タカ、満更でもないんでしょ⁈」
「違うって…
あそこでルミのことを言ったら、先輩の立場がなくなるからだよ。
ルミのこと、守りたいから、俺だって色々考えてるんだ」
さっきまでの楽しい時間は、突然の闖入者にぶち壊された。
つまり、ルミは貴彦の彼女であり、2人の間には、何やら揉め事があるらしい。
完全に部外者となり、立ち尽くす私に、ルミはいきなり指を突き付けた。
「これ、誰?
年上だけじゃ気が済まなくて、こんなダサい子にまで手を出す気なの?」
涙声になり始めた彼女に、貴彦は宥めるように言った。
「わかった…俺が悪いところは改めるよ。ルミ、本当にごめん。
俺が好きなのは、ルミ1人だけだから」
貴彦は私の方を見ずに言った。
「この子は、バイト先の子。
たまたま帰り道が一緒だっただけ。
好きも嫌いも何の感情もねえよ」