ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


それは、ブラジャーだけ着けた羅夢の上半身だった。

滑らかで透き通るような白い肌……
それは、まるで宝石に値するくらい美しいものだった。


『あの…どうしたんですか?』


思わず、私は凝視してしまっていた。


『あ…なんでもないわ。ごめんなさい』


羅夢の怪訝な視線に、さっと目を逸らし、作り笑いをした。


それ以降も、羅夢は着替えの時、上も下も脱いで、堂々とパンティとブラジャーだけの半裸の姿を人目に晒した。


いくら女同士とはいえ、普通、少し隠すものだ。
中年女ならまだしも、若い女なら尚更。


毎朝、羅夢はたいてい時間ギリギリにロッカールームに現れる。


肩までの乱れた髪で、ロッカーのドアを乱暴に開け、自分のバッグを放り込む。


ガン!バタン!ドン!


その荒々しい物音は、
時間がない、という理由だけではない。
すべてにおいてがさつなのだ。


終業後のロッカールームでも、彼女は、カーペットの床に座り込んでのんびり着替えながらも、そんな物音を立てた。


三畳ほどのロッカールームは女子社員専用だったから、私以外には、羅夢の立てる騒音に迷惑を被ることはなかった。




< 4 / 66 >

この作品をシェア

pagetop