ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


彼女は、見栄張りでサービス精神旺盛なのだ。


そして、人を丸め込む術にもなかなか長けていた。


休憩室にパート社員用のポットや扇風機が置かれるようになったのも、江頭が所長に直談判して、会社の経費で購入するように掛け合ったからだ。


これで、昼時に味噌汁やカップラーメンが食べられるようになったし、蒸し暑い時期も多少ましに過ごせるようになったから江頭には皆、感謝していた。



達也は、元同僚だった江頭に気を許していた。


1年前のある日、私のアパートの部屋で、達也は言った。



ーー江頭さんがね、俺がよしみを見る目が怪しいって言うんだよ。
ドキッしちまったよ。鋭いよな。

嘘つけなくて実は彼女なんだって、言っちゃった。
大丈夫。

誰にも言わないって約束してくれたから。同期の桜の誓いだよ。






< 42 / 66 >

この作品をシェア

pagetop