ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
うさぎ
達也は毎週末、私の部屋に来た。
土曜日の夜は一緒に過ごし、日曜日の昼過ぎ、私の作った簡単なブランチを摂ったあと帰っていった。
達也が早く帰るのは、同居する彼の両親の為だ。
彼はとびきり親孝行な息子だった。
数年前からリューマチを患い、足が不自由な母。
彼女を献身的に在宅介護する心臓の持病がある父。つまり、老老介護。
ヘルパーを頼み、県内に住む達也の妹も頻繁に訪ねて、あれこれと世話を焼いてくれたけれど、同居し細かな面で目の届く長男達也の存在は重要だった。
日曜日の午後、達也は車椅子に乗った母と杖をついた父を自分のワゴン車に乗せ、一週間分の食材や不足している日用品を買い出しに行くのが習慣だった。
大きなスーパーで家族三人、あれこれ会話を交わしながら、達也の父が車椅子を押し、選んだ品物を達也の買い物カートに乗せていくのだと言う。
思う存分買っても、大丈夫だ。
重い荷物は、息子が持ってくれるのだから。