ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
ーーへえ……
私は羅夢から視線を外し、テレビのほうへ顔を向けて、グラスの中の3分の1ほど残っていたティーソーダを飲み干した。
ーーごめんなさい……
羅夢の小さな声がしても、私は彼女の方を見なかった。
ーー1度限りで、もう逢わないって約束したんでぇ……
弱々しい呟き声。
そんな謝罪で許されるわけがない。
必死で平静を装い、目の前の女を黙殺しようとした。
ーー水村さん、
羅夢、先に帰ります…
とりあえず、2千円くらい置いていきます…足らなかったら、後で請求して下さい….…
立ち上がる気配がして、私が顔を正面に戻すと。
そこには、私を見下すようにして、立つ羅夢がいたーーー
ーーー不敵な笑みを浮かべて。
ひと月前、スパで聞いた羅夢の告白。
それは、私の頭の中で何度も繰り返されるようになった。
本当なの?と
達也に詰問することなど
とても出来なかった。
怖かった。
羅夢の話は、あまりにも具体的だったから、疑念を抱くには充分だった。