ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


会社の人間でも、気安く出来るタイプだと知った途端、彼女は友達感覚になる。


自分の直属の上司ーー50歳の人の好い男ーーにも、甘えた口調で、与えられた仕事の愚痴をこぼすのを時々見かけた。




ーーやっだあ、羅夢、マジ大変〜



黄色い声を喚き散らして。


幸いなことに、彼女にとってここは天国のような職場だ。


寛大な大人たちは、内心苦笑しながらも、マーガレットのカチューシャも言葉使いも、たしなめることはなかった。


それどころか、彼女のその言動や行動を楽しんでいる節さえあるのだから。

珍しい生き物のように。


羅夢は際どいところで、自分が嫌われないように気を使っていた。


天衣無縫を装っていても、その目の奥にある小心さ、小賢しさに同性である私は、時々同情めいたものを感じた。



ーーあ〜ん、羅夢が悪いのお。
ごめんなさあい!



社内に響き渡る羅夢の甘えた声は、フロアは同じでも、端と端で距離のある私のデスクにも、よく聞こえてきた。







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