ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
以前は、めったに話し掛けてこなかったのに。
「いいえ〜ちょっと、考え事してて」
私は、作り笑顔で答えた。
内心、とても面倒臭くて仕方なかった。
「水村さん、ちょっと聞いてくれない?」
江頭の何も付けていない薄い唇が、一瞬歪んだ。
ーーくだらない話が始まる……
こんなことで、時間を使いたくない。
心底うんざりした。
しかし、胸のうちとは裏腹に、私の顔面に笑みが浮かぶ。
「江頭さん。どうかしたんですか?」
親密な声は単なる習性。
「あのさ、サワベさんとヨドガワさんね、あの人達、仲良しでしょ?
困るのよう。
作業中、お喋りばかりしていて。
それも『リ・何ちゃらがイケメンなのよ〜』とか、くっだらないことばっかり。
手の止まっている人がいると、周りにも悪影響でさ。
午後の始業時間を守らない人がいるのも、サワベさんたちのせいなのよ…
遅れて来てすみませんのひとこともなく、しれ〜っとしてるんだから。
そんでまたお喋り。
仕事しに来てるんだか、遊びに来てるんだかわかんないわ。
本当に頭に来ちゃって」