ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


江頭は『サワベ』達を小馬鹿にし、手振り口真似たっぷりに訴える。


……でも、気がつかないのだろうか。



そんな話し方をされると聴いているこちらまで馬鹿にされている気になることを。



江頭和子は、パートタイマーの総括する役目を自分が担っているとでも思うのか、こんな風に時々『問題提起』をしてきた。


他人のお喋りをチェックするなら、今だって就業時間なのに。


私に言うのは、私が正社員だからだ。


かといって、私はなんの権限もない。


お門違いも甚だしい。


社員だから、という理由だけで、
憎まれ役など真っ平だ。



「そうなんですか…困りますね。
倉庫担当は山田主任ですから、相談してみます。
一言、注意してもらえるように」


私が溜め息混じりに答えると、




「水村さんは、本当大人よね」




江頭は意味ありげに言った。

36歳の女にその言い草は失礼ではないか。


「……まあ、そうですね」


それでも、私の口元には笑みが張り付いたままだ。






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