ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下
「ここだけの話だけどね…」
江頭は辺りをみわし、私の方に顔を突き出して声を潜めた。
「あのさ……
水村さんもはらわた煮えくり返ってるだろうけど、これだけは知っておいた方がいいよ」
「…はい?」
「羅夢ちゃん、尾木君にフラれたの。
自暴自棄になってたんだよ。
唐沢君も男だからさ。
一時の気の迷いだよ。
だから、あんたもヤケを起こさないで、唐沢君を許してあげてよ」
たちまちのうちに、黒雲が私の胸に立ち込める。
「なんのことですか…」
私の予想しない台詞を紡ぎ出す江頭の化粧っ気のない薄い唇を見ながら、私は自分の身体がゆっくりと揺らぎ出すのを感じていた。