ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


唐沢達也(からさわ たつや)は、外出好きだけれど、スパに行こうなどとは絶対に言わない。


だから、私の中でスパという場所は、カラオケやクラブと同様、普段の生活では、縁のないものだった。



「ラムって、私の親が大好きなアニメのキャラクターの名前なんですよ!

さすがにカタカナじゃ、犬みたいだから、漢字にしたっていってましたけどね。

中学、高校の時は、『ラムネ』ってずっと呼ばれてました。
その時は、羅夢って嫌だったんですけど、今はまあ、気に入ってます。
響きが可愛いんで」


向かいに座る羅夢は、そんなことを喋り、フォーの入ったボールを引き寄せ、箸で掬う。


「あ」

私は目で彼女の動きを制した。


「それ、ライム搾って、パクチーいれるの。
ベトナムのフォーはそうやって食べるのよ」


羅夢は一瞬、私を上目遣いに睨むような目付きをした。


「それくらい、知ってますよ!」

「…」


突っかかるような羅夢の言い方に一瞬、怯んでしまった。13歳も年下なのに。




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