恋色ダイヤモンド~エースの落とした涙~
「ありがとな」
中島先生は照れたように笑った。
「しかしいまだに夢みたいだよ。俺だって小さいころから憧れてた場所だからな。
まさか監督で甲子園に行けるなんて、今でも時々朝起きたら夢だったんじゃないかって思う時があるよ」
「ふふふ。子供みたいですね」
部員達だけじゃない。
かつて高校球児だった中島先生にとっても夢の甲子園。
「ああ。女房や子供たちにも笑われてるよ」
「夢じゃないですよ。あと少しで甲子園の土を踏めるんですよ!」
だから。
本大会が終わるまでは、何があってもバレてはいけない。
忌まわしい記憶を払拭するように、あたしは来る日も来る日もただ甲子園でプレーすることだけを考えて、ひたすらマネージャー業に没頭した。