恋色ダイヤモンド~エースの落とした涙~
あれこれ思いを巡らせていると、あたしの家の前についていた。
「毎日毎日疲れてるのにほんとありがとう」
いつものように頭を下げてお礼を言うと、
「あ、増田さん、コートに……」
エビ君が前かがみになって、あたしの肩を覗き込むようにして手を伸ばしてきた。
「なんかついてた?」
エビ君のコートの襟もとが、あたしの頬をかすめる。
「うん。羽みたいのが……取れた」
見せてくれた白い小さな羽は、混雑してた電車で誰かのコートから抜けた物かもしれない。
――その直後だった。
「家の前でキスとか、随分大胆なんだな」
静かな住宅街にそんな声が響いたのは。