恋色ダイヤモンド~エースの落とした涙~
「思ったより時間かかっちゃって」
呼び方が早瀬先輩から佑真先輩へと距離を縮めた彼女が、小走りで駆け寄ってくる。
すぐ脇の教室の扉が開き、彼女に続いて溢れ出てくる生徒たち。
委員会でも開かれていたのか、窮屈だった空間から息を吹き返すように揃って伸びをしている。
「おせーよ」
…なんだ。
……彼女、待ってたんだ。
野球部を見てたんじゃなかった。
もしかしたらという期待は裏切られ、空虚感でいっぱいになる。
「ねぇねぇ…あの人たちって……」
「うわっ……」
あれだけ校内を騒がせたツーショットは誰でも興味深いんだろう。
通り過ぎてく生徒たちから好奇の視線が注がれた。
今では煙のように消えたあの噂をまた蒸し返すような視線。