水のない水槽
「ごめんな、遠藤、講習終わって、今、向かってるってさ」


そんなキラキラ顔を曇らせて、先輩はわたしに謝ってきた。


「え、全然いいですよ~。わたしも遅れちゃったし」

「でもなんか意外だなぁ。朔乃が遠藤なんてさ」

「そ、そんなんじゃ……」

「でしょ~?? なんか意外だよね?」


2人の言葉に顔がほてってくるのがわかる。


きっと今、顔を上げたら、真っ赤になっているハズで。


浴衣の柄に合わせて描いた爪の金魚に視線を落とす。
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