水のない水槽
ガタゴトと揺れる電車の中は浴衣のカップルがいっぱいで。


――わたしたちもそう見えるのかな??


手すりに掴まり、前を見つめる先輩の横顔を覗きみる。


「ん? どーした?」

「や、え、えーっとぉ……」


ヤバい、何も考えてなかった……。


そんなわたしの様子を見て、先輩がブッと噴き出した。


「木下ってさ、前から思ってたんだけど、小動物系だよな?」


え?? 小…動物!?

あまりの驚きに思わず、バッと顔を上げる。

真っ正面から見る先輩の顔。

こんなに間近で見たのなんて、中学校の部活以来で……やっぱりわたしは先輩が好きなんだなぁと実感した。


「そ、そんなコトないですよ~。初めて言われましたもん」

「そう? 俺は昔っから思ってたけど?」


語尾を上げて話す、先輩のクセ。

一時期、真似して、まどかに似合わないって言われたっけ。

そんなコトを思っていたら、先輩がこう続けた。


「ホント、雪乃とは大違いだな……」
< 16 / 51 >

この作品をシェア

pagetop