水のない水槽
「ち、違います!!」


あまりの衝撃に、車の中だと言うことも忘れて、大声を出した。


「だって、ヒロが来てからじゃん。木下が変になったのって」

「変じゃないですよ……」


遠藤先輩がお姉ちゃんばかり見てるから――なんて、ホントのことを言えるワケもなく、わたしは否定の言葉を繰り返す。


「ホントにヒロくんは何も関係ないですから」


ただでさえ、見込みのない恋なのに、さらに誤解までされてしまうなんて。


今日の運勢、そんなに悪かったっけ??


なんて、呑気に毎朝見ている、星占いの結果を思い出してる場合じゃない。


「だから誤解しないでくださいね!」


先輩に変に思われないように、最大限の笑顔を作った。


「…ふぅーん。なら、いいんだけど」


カチャカチャと携帯をいじりながら、先輩が納得いかないような声で、生返事をする。


――こんな時じゃなければ、写メ撮りたいんだけどなぁ。


鼻筋のスッキリと通った横顔を、横目でコッソリ覗き見る。


――やっぱりカッコいい……。


そっとため息をついた時だった。
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