水のない水槽
いつ頃だっただろう?

先輩の眼が、ゆーくんの眼が、お姉ちゃんばかり追っているのに気づいたのは。


――ゆきちゃんはおんなのこだからぼくがまもってあげる!

――えーゆーくん、よわいからいいよー

――……

――だから、ゆきのがゆーくん、まもってあげる!!


幼稚園の砂場で3人で作った小さなお城と一緒に思い出すのは、強気なお姉ちゃんと困り顔のゆーくん。

……そして、お城に空けた穴の中で、しっかりと繋がれていた2人の手。

たったそれだけのことなのに、無性に哀しくなって、泣き出してしまったのを覚えてる。


――ごめんね、さくのちゃん。ごめんね。


あの時の「ごめんね」は、多分……ゆーくんの決別の言葉だったんだと思う。
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