水のない水槽
「もう~雪乃は相変わらず、慌ただしいんだから」


わたしの背後から、お母さんが呆れた声を出す。


だんだんと仕上がってくる着付けに振り回されながら、ふと気付く。


――そういえば、お姉ちゃん、なんで知ってるんだろう??


「ね~お母さぁん」

「ん~?」

「お姉ちゃんに誰と行くって言ったぁ?」

「そんなこと、言ってないわよ~。あ、でも、昨日、まどかちゃんからの電話とったの、雪乃じゃない?」


――まどかのヤツぅ…。絶対、あとで奢らせてやる!


心の中でそう呟き、わたしは化粧を直し始めた。
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