彼は私を狂愛した。
「いやっ...はぁはぁ...」
慧兒がやっと唇を離してくれた。
「...魅音。帰ろう?俺、魅音いないとダメなんだ...」
慧兒が両目から涙を浮かべ、ゆっくりとその涙が頬を伝った。
そんな甘い言葉に騙されたくない....。
慧兒の何を信じろって言うの...?
ギュッと唇を噛み締めた。
もう...何も信じられないよ。
私は慧兒を置いて後藤くんの元へと向かった。
「うっぐぁ...ゲホゲホ...」
後藤くんの声が段々と近づく。
声が大きくなると同時に私の身体の震えも増す。
「ご、ごとうくん...!!」
やっと後藤くんが見える場所へと行ってみると
ロープの様なもので手足を縛られ
至るところから血を流している後藤くんがいた。
「やっ...後藤くん...!いや、いやだ!!」
私は後藤くんを抱きしめた。
私、どうしたらいいの...?
後藤くんの胸からはまだ
ドクドクと生きていることを確かめさせてくれる
心臓の音が確かに聞こえた。