彼は私を狂愛した。

「...あ...」



そこには後藤くんがいた。



やっぱり後藤くんだったんだ...。



「ご...」



私が話しかけようとすると後藤くんは



あからさまに私から視線を外す。



「...あの」



いつもの私だったらきっと声はかけられないと思う。



だけど今は違う。




「...はい」



後藤くんが小さく返事をした。



そしてゆっくりと私へ視線を向ける。




「...助けてくれたの...?」




「...はい」




「あ、りがと...う」



ぎこちなくお礼を言った。



すると後藤くんはため息をついて頭をポリポリと掻く。




「...じゃあ、俺はこれで」



後藤くんは私の前から去ろうとしている。



当たり前のことだよね...。



私が今まで散々してきたこと。



「...ま、待って!!」



私は無意識に後藤くんを引き止めていた。

< 163 / 235 >

この作品をシェア

pagetop