彼は私を狂愛した。

「あ...」



ここで後藤くんの名前を呼んだら


慧兒を失う...?



だけど、このままでいたら



後藤くんとの関係が崩れてしまうかもしれない...。




「...魅音ちゃん。慧兒さんといるのが辛いなら俺の所に来てよ」



「え...?」



後藤くんにそう言われた瞬間すごく驚いて


目を見開いた。



...だけどそんなこと出来ないよ。



「ありがとう。...だけど私、大丈夫だから」



後藤くんが一瞬だけ悲しそうな顔をした。



だけどすぐ笑顔になって私に告げる。



「そっか。なら良いんだけど」



後藤くんをこれ以上巻き込ませたくない...。



「うん...ありがとう。....舜」



小さかったけれど後藤くんの名前を呼んだ。



聞こえなかったかもしれない。



後藤くんにそっと目を向けると



すごく顔を真っ赤にしていてなんだか可愛かった。




「あ...うん!えと、また後で...」



そう言って後藤くんは逃げるように去っていった。



「...あはは」



自然と笑みが溢れた。



こんなに自然に笑えたのいつぶりだろう。



なんだか急に嬉しくなった。



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